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1回目の帰り道、なんとなく涙が出そうになった。

誰かに優しくされるって、こんなにも沁みるんだと思った。

あの夜、彼女は「疲れたら、また来てね」と言ってくれた。

だから俺は、また来た。

正直、自分でも驚いてた。

こういう場所って、一度きりで終わらせるものだと思ってたから。

扉を開けると、彼女は前と同じように笑った。

名前は、覚えてなかったと思う。

でも、それでいい。

“誰として来たか”より、“どう扱われるか”の方が、大事だった。

「前より少し元気そう」

たったそれだけの一言が、胸に刺さった。

たぶん、適当な気遣いの言葉だったかもしれない。

でも、俺は勝手に「見てくれてた」と感じてしまった。

2回目になると、不思議と気持ちに余白ができる。

彼女の手の動き、声のトーン、沈黙の優しさ。

前よりずっと、丁寧に感じた。

それでも関係は変わらない。

何も始まらないし、何も深まらない。

でもそれが、ちょうどよかった。

本気の恋じゃない。

埋まらない孤独を埋めてくれる相手でもない。

でも、あの部屋の中だけは、

誰かに甘えても許される場所だった。

終わり際、彼女は俺の手を少しだけ強く握って、

「また、疲れたらね」と笑った。

それはたぶん営業トーク。でも——

それでも、俺は救われた。

“帰ってこれる場所”があるってだけで、

人は少し優しくなれる気がする。

この関係には名前がない。

でも、確かに意味はあった。

俺の人生の中で、誰にも言えないけど、一番やさしい再会だった。

まどか